正しい解雇の方法 第2回目
雇用主の立場に立って、全5回を通じて、安全な解雇を行うための方法について解説する「正しい従業員解雇の方法」の第2回目のコラムです。前回は、解雇予告及び解雇予告通知まで解説しました。
前回のコラム:正しい解雇の方法 第1回目
今回は、従業員(社員)を合理的に解雇をするために必ず守るポイントについて解説しています。
証拠を確保する~欠勤届けは義務づけよう~
社員の業務効率が悪い、勤務態度が悪い等を理由に解雇をしたい旨のご相談を受けることがあります。このようなケースで最も危険なのは証拠に基づかないで解雇をしてしまうことです。
前回もお話ししたように解雇には合理的な理由が必要です。ここでは無断欠勤を例に挙げて説明します。
- 証拠がないと何でも主張できる
労働審判等になると従業員側も自分の言い分を主張します。雇用主が無断欠勤だと言っても従業員側から「予め電話で欠勤する旨を伝えたから無断ではない」等の主張が出てきて争いになることは珍しくありません。 - 解雇の証明責任は雇用主にある
そして解雇が正当であることを証明する責任は雇用主にあります。つまり雇用主が、無断欠勤があったことの証拠を提出しなければなりません。
ですので欠勤する場合は、事前もしくは事後に欠勤届を提出する運用を採用すること等で無断欠勤の立証が可能となります。 - すべての従業員に義務づける
時々見られるのが、問題行動がある社員のみ欠勤届を要求するケース。これではダメです。社員には「必ず」欠勤届を要求している運用であることも併せて主張しなければ意味が無いからです。
つまり、「欠勤届は出していなかったが、自分以外の人も欠勤届を出していない」と言われてしまうと、裁判での効果は半減してしまうのです。
賃金カットは簡単にできない?
中には合意退職を迫るために一方的に労働条件を変更しようとする雇用主がいます。例えば賃金を一部カットして、その条件が嫌ならば合意退職するよう勧めるケースです。しかしこれは雇用主が一方的に行うと違法となります。
- 賃金カットは従業員の同意が必要
賃金の減額は労働契約内容の変更ですので、懲戒処分の場合でもなければ、従業員の同意が必要です。 - 懲戒処分も就労規則に則って行う
懲戒処分も、就労規則に従って行う等の制約がありますから、雇用主の自由に賃金カット等はできません。
ここまで読んで頂けると解雇はなかなか大変だということがおわかりいただけると思います。
そこで、正しい解雇の方法 第1回目にお伝えしたようにやはり合意退職ですむならそれが一番良いという話になるのです。
どうやって、合意をとるか?
問題のある社員が就業規則に定められた懲戒規定に該当するような問題行動を起こした場合等には、懲戒規定にしたがって、降格や減給の処分ができます。
しかし以下の点については特に気を付けなければなりません。
- 平等性に欠ける行為はNG
他の社員が同じミスをしても戒告ですんだのに「問題行動を起こした社員だけ戒告を飛び越して、いきなり減給等の処分を課す」といったことはできません。
したがって懲戒規定を適用するにあたっては、過去の懲戒の事例等にも十分に目を配る必要があります。 - 問題社員に対する対応の仕方
度々ミスを犯す社員に対しては、ミスを重ねる毎に戒告→減給→出勤停止等、徐々に処分内容を重くすることはできます。
ですので問題行動を犯す社員が違反等を侵し続けて結果的に懲戒規定に該当した場合は、上記対応によって、減給等の不利益処分を課すことができます。
(弁護士片島均:プロフィール)
(第3回目に続く)