「能力不足で解雇」は可能なのか

スキルを持つ人物が即戦力的に必要なので「この人はできそうだな」と採用したが、実際の業務を見てみるとどうもできない…。

「これは解雇かな…」と思った事業主の方、ほとんどの場合はすぐに解雇することができませんので気をつけてください。

能力不足による解雇について

特に中小企業の場合は、人材の能力が経営状態に直結することもあるので、深刻な問題ですね。

「能力不足」を理由に解雇できる場合

これは単純に「成績が悪いから」という理由ではなく、ある程度高度な、または専門的な能力を有しているとお互いに納得して雇用した場合などです。

例えば、プログラマが「プログラミングはできます。○○の言語は5年の経験があるので大丈夫です」と言ったので、即戦力として欲しいと採用した。
しかし実際には、○○言語でのプログラミングがさっぱりできず、しかもその地域では当該プログラミングの知識がある人材がほとんどいないので、事業がストップしてしまう…。

これでは業務に差し支えることになってしまいます。ですので、この場合は最終的に解雇の対象となる可能性があります。

能力不足の証拠を集める必要がある

この従業員が明らかに求められている能力が不足しているということを客観的に証明する必要があります。単に「これができない、あれができない」という主観的な感想ではいけません。

そこで、例えば

  • 同僚や上司の評価
    能力不足で他の従業員が手伝わなければならないなど
  • 成果、成績の評価
    成果物となるプログラミングにミスが多数ある。営業成績が著しく低い、など
  • 業務の質的評価
    同様の業務を行わせても、他の従業員に比べて著しく時間がかかる、など

等の様々な客観的評価や、実際の顧客からのクレームや会社が被った損害などを証拠として集めていきます。

しかし、解雇というのは「やむなく、他に手段がなく」最終的な選択として行うものですので、この時点ではほとんどの場合で、解雇をすることはできません。

※例外として、「事業を統括する」責任者として入社したなどの重大な能力を求められて入社した場合は、この時点で解雇が成立する場合もあります。

改善の機会や教育訓練を与える

上記の証拠を集めて「明らかに能力が不足している」と証明できる状態になったら、解雇を行う前に、従業員自身の能力不足を会社側が解消し、できるだけ解雇を避ける必要があります。

部署移動、配置転換

例えば「プログラミングができなかったけれど、エクセルの達人だったから経理に異動した」というような場合です。これは最初に期待された能力ではなく、他の能力を発揮できたことで解雇を回避することができた分かりやすい例だと言えます。

教育訓練

簿記の資格を持っていて、面接の際にも伝えてあるのに、貸借対照表を作成できなかった従業員に教育をした結果、作成できるようになり、解雇を免れたというケースがあります。
この場合は専門知識を持った方を招いてレクチャーを受けたので会社側が費用を負担することになりましたが、解雇を避けることができました。

※上記は個別の労働契約書を結ぶことにより必要がない場合があります。

「止むを得ない」場合はどうする?

上記のように会社側が努力をしたが、どうしても上手くいかないケースもあり、そうなって初めて「解雇」ということが具体的になってきます。

しかしきちんとした手順を踏まないと「不当解雇だ」と訴えられても反論できず、賠償金を支払うこともありますので、くれぐれも安易に「解雇」をしないようにしましょう。

また、解雇が難しい場合は退職勧奨という形をとったほうが良い場合もありますし、上記でも触れましたが労働契約書が効力を発揮する場合もあります。

労働問題、雇用問題は人間同士の問題でもありますので、お互いが納得いくことが最善の結論です。そのために決して感情的にならないように気をつけたいものです。

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この記事は弁護士が監修しています。

片島 均(弁護士)弁護士法人法律事務所DUON
茨城県弁護士会所属(登録番号:42010)

交通事故、相続、借金破産、離婚、刑事事件、不動産、企業法務(労働問題)など幅広い分野に対応。
代表を務める弁護士法人法律事務所DUON はほぼ全ての分野の法律問題をお取り扱いしています。全体の案件数としては、地域柄もあり「離婚事件」や「交通事故事件」「破産事件」「相続問題」等のお取り扱いが多いですが、法人・事業者様の労使問題等にも力を入れており、特に地元の中小企業の経営者様を中心にご相談いただいております。

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