認知症の人が交通事故を起こしたら

日本では急速に高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢者認知症の割合も急増しています。
2012年には約462万人、割合にすると約15%でしたが、2025年には約700万人、割合にすると20%にまで増加すると推計されています。

ただ、全員に認知症の自覚があるとは限りません。自動車運転中に事故を起こしてしまい、そこで初めて検査を受けて認知症に気づいた高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。
同居の家族ですら認知症に気づかないケースが多々あります。

認知症の方が交通事故を起こしたら、本人や家族にさまざまな責任が発生します。生活のために車を運転する必要があるので、どなたにとっても他人事とはいえないでしょう。

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今回は、認知症の方が交通事故を起こしたときの責任について、弁護士が解説します。

1.高齢ドライバーの事故は増加の一途

2014年に高速道路各社と警察庁がまとめた統計によると、

2011年から2013年にかけて起こった高速道路における571件の逆走(事故に至らない案件も含む)の約7割が65歳以上の高齢者によるもの

という結果が出ています。高齢者ドライバーによる交通事故発生状況の原因で多いのが以下のようなものです。

  • 脇見や考え事をしていたなどによる、発見の遅れ(67.1%)
  • 相手の予測を見誤った判断の誤り(10.0%)
  • ブレーキとアクセルを踏み間違えるなどの操作上の誤り(5.9%)

注意力や判断能力の低下など、年齢とともに衰えるものでほとんどが占められているようです。

2.事故を起こした際の刑事責任

認知症の人が自動車を運転中に交通事故を起こして人を死傷させたら、刑事責任が発生します。
成立する可能性のある犯罪は「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」です。

2-1.過失運転致死傷罪

一般的な人身事故のケースで成立する犯罪です。脇見運転や前方不注視などの通常程度の過失によって事故を起こしたときに成立します。

過失運転致死傷罪の刑罰

刑罰は7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金刑です。

2-2.危険運転致死傷罪

故意とも同視すべき極めて危険な運転によって交通事故を起こし、人を死傷させたら「危険運転致死傷罪」が成立します。
危険運転致死傷罪になるのは以下のようなケースです。

  • アルコールや薬物の影響で正常に運転できないのに、あえて運転して交通事故を起こした
  • 危険な高スピードで運転した
  • 走行中の車両や歩行者の直前に割り込むなど極めて危険な方法で運転した
  • 赤信号をことさらに無視するなど非常に危険な方法で運転した

認知症の方の場合、病気によって判断能力が低下しています。高速道路を逆走したり交差点に高スピードで突っ込んだりして、大きな危険を引き起こすケースも少なくありません。「危険運転致死傷罪」が成立して極めて厳しい刑罰を適用される可能性もあるので注意しましょう。

危険運転致死傷罪の刑罰
  • 負傷させた場合:15年以下の懲役刑
  • 死亡させた場合:1年以上20年以下の懲役刑

2-3.責任能力について

認知症で知能が大きく低下している場合、刑事裁判で「責任能力がない」と判断される可能性があります。
責任能力とは、刑事責任を負うだけの能力です。事理弁識能力が完全に失われて心神喪失状態になっていたら、刑事責任を負わせることはできません。
その場合、検察官が不起訴にする可能性も高くなりますし、仮に刑事裁判になっても精神鑑定を行って「無罪」になるでしょう。

ただ「認知症であればすべてのケースで無罪になる」わけではありません。最低限の判断能力が残っていれば処罰されるので、運転しないようにしましょう。

3.損害賠償などの民事責任

ここまでは刑事責任について説明してきましたが、損害賠償の「民事責任」については、原則として健康な方が起こした事故と変わりはありません。
被害者がけがをしたら治療費や慰謝料、休業損害を払わねばなりませんし、後遺障害が残ったら高額な後遺障害慰謝料や逸失利益も払わねばなりません。物損についても被害弁償が必要です。
認知症の方は注意力や集中力も低下して危険な交通事故を起こすケースが多いので、過失割合を高くされて賠償金が高額になる可能性も十分にあります。

3-1.賠償金の支払い方法

任意保険に入っていたら任意保険会社が支払をしてくれます。運転者が認知症であっても対人対物責任保険は適用されるので、利用しましょう。

3-2.認知症が重度だと家族に責任が発生する可能性も

認知症が重度の場合、本人に不法行為責任を負うだけの「責任能力」が認められない可能性があります。その場合、本人は交通事故によって発生した損害賠償責任を負いません。

ただし「家族」に「監督者責任」が発生する可能性があるので注意が必要です。監督者とは、不法行為の責任無能力者を監督すべき人です。未成年者の親や認知症の方の家族などに監督義務が認められます。

高齢で認知症となった家族が運転しているのを知りながら放置していると、事故が発生したときに家族に責任が生じる可能性が高くなります。認知症の家族がいる場合、本人が車のキーにアクセスできないよう厳重に管理するなどの対策をとってください。

4.高齢になったらチェックと返納を

冒頭で述べたように、認知症になっても気づかない方が少なくありません。免許証更新前の高齢者講習に積極的に参加し、必要に応じて免許の返納も検討しましょう。
「生活が不便になるから」などの理由で返納を怠っていると大変な事故につながることもあるので、ご家族など周囲の方も充分気をつけてください。

実際、ご本人が自分から免許返納するのは抵抗感が強いものです。ご家族がうまくお話を進めて免許返納させるよう促してみましょう。

茨城県の法律事務所DUONは交通事故問題を多数解決してきた実績をもとに、交通事故予防やトラブル解決のアドバイスやセミナーなどを行っております。初回相談料は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

この記事は弁護士が監修しています。

片島 均(弁護士)弁護士法人法律事務所DUON
茨城県弁護士会所属(登録番号:42010)

交通事故、相続、借金破産、離婚、刑事事件、不動産、企業法務(労働問題)など幅広い分野に対応。
代表を務める弁護士法人法律事務所DUON はほぼ全ての分野の法律問題をお取り扱いしています。全体の案件数としては、地域柄もあり「離婚事件」や「交通事故事件」「破産事件」「相続問題」等のお取り扱いが多いですが、法人・事業者様の労使問題等にも力を入れており、特に地元の中小企業の経営者様を中心にご相談いただいております。

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