婚約破棄の慰謝料は請求できる?弁護士が解説

婚約相手に一方的に婚約を破棄された。
頭が真っ白になると同時に、破棄した相手に怒りがこみ上げてきて、慰謝料でも取らなければ気がおさまらないことでしょう。
では、婚約破棄された場合、相手に対して慰謝料を請求できるのでしょうか。
本稿ではこの点について解説していきます。

1 婚約破棄とは何か~婚約解消との違い

婚約破棄とは一言で言うと、結婚する約束を一方的に取り消すことを言います。
似た言葉に「婚約解消」がありますが、婚約解消とは、当事者の合意のもとで結婚する約束を白紙に戻すことを指します。合意の有無に両者の違いがあります。
慰謝料請求の問題が生じるのは、婚約破棄の場合となります。

2 婚約破棄の慰謝料は請求できるのか

結論からいうと、婚約破棄された場合、慰謝料請求をすることができるケースもあるということになります。
そこで、慰謝料請求できる婚約破棄とはどのようなものかが問題となりますが、最低限「婚約していることが客観的にわかる場合」であることが必要です。
例えば、婚約指輪を送った、結納を交わした、お互いの両親や親族に結婚のあいさつをした、式場の下見や予約をしたという場合です。
このような状況が見られる場合には、その当事者の関係は単なる「交際」ではなく、前婚状態として法的に一定程度保護されることとなるため、一方的な破棄に対して慰謝料請求ができる可能性が生じるのです。

3 婚約破棄が認められる可能性が高くなる条件

しかし、婚約破棄に正当な理由がある場合には、慰謝料請求することができませ
ん。以下では、具体的にどのような場合に正当な理由があるとされ、慰謝料請求
が認められないのか、逆に正当な理由がないとして慰謝料請求ができるのはど
のような場合かについて解説します。

3-1 婚約破棄に正当な理由があり、慰謝料請求が認められない場合

正当な婚約破棄か否かは、実際には個別具体的な事情により判断することとなりますが、一般的に正当な理由があると考えられるものの代表的な例は以下のとおりです。

3-1-1 不貞があった場合

婚約した当事者の一方が、婚約後に自分以外の第三者と浮気をしていた場 
合には、他方当事者の婚約破棄には正当な理由があるといえます。したがって、浮気をした当事者は、婚約破棄を理由として慰謝料を請求することは当然できません。
逆に浮気をされた方は、浮気をした当事者と浮気相手に対して、婚約破棄により婚姻する利益を侵害されたことについて慰謝料や財産的損害に対する損害賠償を請求することが可能です。

3-1-2 DVがあった場合

婚約した当事者の一方が他方に対してDVをしていた場合は、DVされた側が婚約破棄をしても、当然のことながら、DVをしていた側は婚約破棄をしたことを理由とする慰謝料請求をすることはできません。
むしろDVをされた側がDVをした側に対して、DVによる精神的苦痛を理由とする慰謝料請求や病院への通院代などの財産的損害に対する賠償請求をすることが可能です。
なお、DVというと、身体的暴力を指すイメージがありますが、実際には、これにとどまりません。他にも、性的行為の強要(性的DV)や、侮辱したり罵倒したりする精神的暴力(精神的DV)、仕事を無理やり辞めさせる、生活費を渡さない(経済的DV)といったものが、DVに含まれます。

3-1-3 多額の借金があることが判明した場合

当事者の一方が実は多額の借金を抱えていたことが判明した場合も、他方 
が婚約破棄することは正当なものと考えられます。このまま婚姻することによって、自身の資産が脅かされる危険性が相当程度あるからです。

3-1-4 重大な精神疾患の発症

当事者の一方が婚約後に重大な精神疾患を発症した場合も、他方が婚約破棄することは正当なものと考えられます。したがって、このようなケースでは、婚約破棄された側は慰謝料を請求することはできません。

3-2 婚約破棄について慰謝料請求が認められる場合

3-1にあげたような正当な理由といえるものがない婚約破棄については、慰謝料請求が認められます。
具体的には、性格の不一致、他に好きな人ができた、親の反対にあった、相手が特定の宗教の信仰をやめないといったものが考えられます。婚約破棄された相手方に落ち度も問題もないケースは、慰謝料請求が認められるといえるでしょう。
実際に裁判で慰謝料が認められたケースとして、女性が被差別部落出身であることを理由に、男性が両親に反対されたとして婚約を破棄した事例があります。

4 婚約破棄に伴う損害賠償にはどのようなものが考えられるのか

4-1 精神的苦痛に対する慰謝料

一方的に婚約破棄されたことにより、「婚姻の約束」という利益を侵害され、精神的苦痛を被っているのですから、これに対する慰謝料の請求が可能です。
慰謝料の相場は、一般的には、おおよそ50万円から200万円程度と考えられます。
金額に幅がありますが、具体的な事情によって、差が生じることとなるでしょう。
例えば、婚約指輪を交わしただけで、式場の予約すらしていないような場合は慰謝料額は低額になりますが、既に同居を開始していたようなケースや結婚を理由として退職したようなケースでは、慰謝料が高額になると考えられます。

4-2 財産的損害に対する損賠賠償

婚約破棄により発生するのは慰謝料だけではありません。
婚約破棄に伴って財産的損害が発生する場合には、これを理由とする損害賠償の請求もできます。財産的損害について損害賠償請求ができる代表的な例として、以下のようなものが挙げられます。

  1. 予約していた結婚式場のキャンセル料
  2. 同居するために賃借した部屋の契約解除料
  3. 新居を購入していた場合の購入代金
  4. 既に同居を開始していた場合の引っ越し代金
  5. 新婚旅行のキャンセル料
  6. 結婚指輪の購入費
  7. 結婚するために仕事をやめていた場合、一定期間の給与相当分
  8. 結納金

5 時効に注意~慰謝料請求や損害賠償請求は迅速にすることが必要

婚約破棄は、「婚姻する債務の不履行」と考えられるので、婚約破棄されたと知ったときから5年、婚約破棄の時点から10年の消滅時効の適用があります。
損害賠償や慰謝料の請求を長期間放置しないように注意しましょう。
なお、婚約破棄は、場合によっては不法行為(民法709条)に該当し、損賠賠償請求権は3年の消滅時効の適用があるという説もあるようです。
いずれにせよ、長期間放置することによって、生じるのは時効の問題だけではありません。
証拠が散逸したり、相手方の資産状況に変化が生じて支払能力がなくなったりして、請求が困難になる、支払いを受けられなくなるといった事態にいたる場合もあり得ます。
婚約破棄された場合には、迅速に慰謝料や損害賠償を請求するようにしましょう。

6 婚約破棄は弁護士にご相談ください

婚約破棄の慰謝料請求には、証拠の収集や、婚約破棄してきた相手方との交渉など、一般の方には難しい問題があると同時に精神的に苦痛を覚える事態が生じます。
実際に慰謝料を請求できる事案といえるかどうかは、法的な観点から判断する必要があり、一般の方にとっては難しいといわざるを得ません。
そのため、婚約破棄の慰謝料請求には弁護士の助力が必須といえます。
婚約破棄をされて悩んでいる方は、どうぞ一度弁護士にご相談ください。
当事務所には、男女問題に詳しい弁護士がそろっております。どうぞお気軽にご相談いただければと思います。

ページの先頭へ

特設サイトをご利用ください

menu
事務所一覧

新規相談予約センター

電話で毎日24時まで予約できます。
0120-074-019
相談予約受付時間:
平日・土日祝日6時~24時