個人事業主・フリーランスが自己破産するときの注意点

「個人事業主やフリーランスが自己破産すると、破産後も事業を継続できるのでしょうか?」
といったご心配をされる方が多数います。
個人事業主やフリーランスが破産しても事業を続けられる場合がありますが、継続が困難となってしまう可能性もあります。また個人事業主が自己破産するときには「管財事件」になる可能性も高まります。費用などのご負担が重くなってしまうケースが多いので、知識を持って準備する必要があります。

個人事業主やフリーランスが自己破産する場合にどういった状況になるのか、ポイントを押さえておきましょう。

この記事では個人事業主やフリーランスが自己破産する場合の注意点を弁護士が解説します。破産を検討している方は参考にしてみてください。

1.個人事業主が自己破産した場合に免責される債権

個人事業主やフリーランスでも、会社員などの給与所得者と同様に自己破産ができます。
個人事業主やフリーランスだからといって特別な手続きが用意されているわけでもありません。
また個人事業主の場合、一般の会社員より高額な負債を負っているケースも多々ありますが、自己破産に限度額はありません。保証債務も免責対象になるので、誰かの保証人になっていても義務を免れることが可能です。

個人事業主やフリーランスが借金をして支払えなくなってしまった場合、自己破産をして免責してもらうと良いでしょう。

2.個人事業主の売掛金や買掛金の処理について

個人事業主の場合、売掛金や買掛金が認められるケースも多々あります。
売掛金や買掛金が破産手続内でどのように取り扱われるのか、みてみましょう。

2-1.売掛金は財産になる

個人事業主に売掛金がある場合、財産として取り扱われます。
破産手続開始決定が降りると破産管財人が選任されますが、破産管財人は売掛先へ請求を行って売掛金を回収していきます。
そこで個人事業主が破産する場合、売掛金の一覧表が必要です。
申立てを依頼する弁護士にも相談しながら、事前に売掛先や売掛金額をまとめた一覧表を作成しておきましょう。

2-2.買掛金は負債になる

買掛金がある場合には「負債」として取り扱われます。
買掛金のある取引先は「債権者」となるので、弁護士や裁判所から破産に関する通知が行われます。また買掛金の債権者は破産財団から配当を受けられるだけで、買掛金全額の支払いを受けられわけではありません。
買掛金のある債権者には自己破産によって迷惑をかけてしまう可能性があるので注意しましょう。

偏頗弁済してはならない

重要な取引先だからといって、その取引先のみを優遇して支払を行うと「偏頗弁済」となってしまう可能性があります。
偏頗弁済になると、破産管財人によって弁済の効力を否定されたり免責を受けられなくなってしまったりする可能性があるので、自己判断でやってはいけません。

買掛金があって個別に支払いをすべきかどうか迷ったときには、申立を依頼する弁護士に相談しましょう。

3.個人事業主が破産したときに免責してもらえる債権

個人事業主が破産すると、以下のような負債についてはすべて免責してもらえます。

  • 事業用ローン
  • 住宅ローン
  • 車のローン
  • キャッシングやカードローンなどの借金
  • リース料
  • 買掛金
  • 手形の負債
  • 未払いの家賃、地代
  • 未払いのスマホ代
  • 未払いの水道光熱費

借金以外にも負債があれば、ほとんどは免責してもらえると考えてよいでしょう。

破産しても税金の支払義務は残る

一定の負債については、自己破産しても支払義務が残ります。
免責対象にならないのは以下のような負債です。

  • 税金、公的保険の保険料
  • 罰金
  • 従業員への給料や預り金返還債務
  • 婚姻費用、養育費
  • 一部の損害賠償請求権

個人事業主やフリーランスが破産しても、税金は払わねばなりません。住民税や所得税、消費税などが発生していると、破産後も支払義務が残るので要注意です。
一括で払えない場合、所轄庁と協議して分割払いなども検討しなければなりません。

また個人事業主が従業員を雇用している場合、給料が未払いになる可能性もあります。その場合、給与債権も免責の対象にならず、払わねばなりません。

婚姻費用や養育費などの扶養に関する債務も免責されないので、注意しましょう。

4.個人事業主が破産すると管財事件になる可能性が高い

個人事業主が破産する場合、「管財事件」になる可能性が高くなります。
管財事件とは、破産管財人が選任されて財産の換価や債権者への配当が行われる破産手続きです。

破産手続きには大きく分けて「管財事件」と「同時廃止」の2種類があります。

4-1.管財事件

管財事件は破産管財人が選任される原則的な破産手続きです。破産管財人が破産者の財産のうち生活に必要な最低限度を超えるものを現金化して債権者へ配当します。
そこで管財事件になると、一定以上を超える破産者の財産は失われます。
また破産者に一定以上の財産がなくても、免責不許可事由があれば管財事件になるケースが多数です。申立の段階で債権者や財産の状況が不明な場合にも、破産管財人が選任されて調査が進められます。

個人事業主や法人の場合にもほとんどのケースで管財事件になります。事業関係の在庫や設備などがある場合や取引先などの関係も複雑なケースが多く、管財人による調査を行う必要性が高いためです。

管財事件が選択されるのは以下のような場合といえるでしょう。

  • 破産者に一定以上の資産がある
  • 破産者に免責不許可事由がる
  • 破産者が法人や個人事業主

4-2.同時廃止

同時廃止とは、破産管財人が選任されない簡易な破産手続きです。破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止(終了)されるので、実質的には破産手続きとして何も行われません。
個人事業主の場合には原則的に管財事件になるので、同時廃止で処置してもらえるケースは少数です。

ただし個人事業主であっても、過去に事業を廃業済みであり現在は事業関係の財産も契約関係も存在せず、特段調べるべき事項が少ない事案については同時廃止にしてもらえる可能性があります。

5.管財事件になるデメリット

個人事業主やフリーランスが自己破産すると、管財事件になるケースが大多数です。
その場合、以下のようなデメリットがあります。

5-1.費用がかかる

管財事件になると、同時廃止よりも費用がかかります。破産管財人の予納金がかかるためです。予納金は最低でも20万円となりますし、弁護士に依頼せずに一般管財となった場合には50万円以上かかる可能性もあります。
費用が高額になるのは大きなデメリットといえるでしょう。

少額管財とは

予納金を安くするには、少額管財にしてもらう方法がおすすめです。少額管財とは、小さな管財事件についてマニュアル的に簡易な処理をするものです。少額管財にしてもらえたら、予納金は20万円程度となるケースが多数です。
一般管財になると50万円にもなるので、少額管財にすると費用を大きく節約できます。
少額管財にするには弁護士に自己破産を依頼する必要があるので、個人事業主やフリーランスの自己破産は弁護士に依頼するのが良いといえるでしょう。

5-2.裁判所へ行く回数が増える

管財事件になると、破産者が裁判所へ行かねばならない回数が増えます。月1回程度開かれる債権者集会に毎回、行かねばならないからです。
同時廃止なら免責審尋に1回行けば良いだけのケースも多いので、裁判所へ行く回数が増えることも管財事件のデメリットといえるでしょう。

5-3.時間がかかる

管財事件は同時廃止と比べて時間がかかります。
同時廃止なら破産手続開始決定から免責決定まで2~3か月程度であるケースが多数ですが、管財事件の場合には半年程度がかかってしまうのが一般的です。

6.個人事業主が破産すると事業を継続しにくくなる

個人事業主やフリーランスが自己破産すると、事業を継続できないのでしょうか?
事業継続の可否については、その方のおかれた状況によって異なります。
一般的には個人事業主が自己破産すと、事業を継続しにくくなるといえるでしょう。
理由は以下のとおりです。

6-1.設備や道具が失われる

個人事業を行う場合、仕事のために道具を使っていたり専用の設備を利用したりしているケースが多いでしょう。
自己破産すると、仕事に必要な道具や設備が換価されて失われる可能性が高まります。自己破産の手続きにおいては一定以上の価値のある資産は換価・配当の対象になるからです。
たとえば以下のようなものは失われる可能性が高いと考えましょう。

  • 事業用の設備
  • 什器
  • パソコン(2台目以降)
  • 在庫や材料
  • 自動車やバイク
  • 不動産(営業所・倉庫・工場など)
  • 売掛金
  • 貸付金
  • 事業用の保険(解約されます)

事業に必要な設備や道具がなくなったら、その後の事業継続は困難になってしまうでしょう。
ただしフリーランスがパソコン1台でネット事業を行っている場合などには、事業を継続できる可能性があります。

6-2.契約が解除される

個人事業主の方は、従業員を使って事業展開している場合も多々あります。備品や車のリース契約、事務所の賃貸借契約を締結しているケースも多いでしょう。
自己破産すると、上記のような事業に必要な契約が解除されてしまいます。
従業員が失われ必要な備品などもなくなってしまったら、事業継続は困難となるケースが多いでしょう。

6-3.借り入れができなくなる

個人事業主の場合、事業を継続するのに借り入れを行うケースも多々あります。
しかし個人が自己破産すると、借り入れは難しくなってしまいます。いわゆる「ブラックリスト」の状態になるためです。
ブラックリストとは、信用情報に事故情報が登録されてローンやクレジットカードなどを一切利用できなくなった状態です。カードローンなどの消費者ローンだけではなく、銀行や公庫などからの借り入れもできなくなってしまいます。

個人事業主やフリーランスが自己破産すると借り入れができなくなるので、自己資金で対応するしかなくなります。そうなると、事業内容が制限されて以前のようには事業展開できなくなる方が多いでしょう。

6-4.取引先の信用を失う

個人事業主やフリーランスが買掛金債務を負っていたり借り入れをしていたりすると、そういった取引相手の負債も破産免責の対象になってしまいます。そうなると取引相手は満足に弁済を受けられないので、「今後は取引をしたくない」と考えるでしょう。

知り合いである取引先に保証人になってもらっていた場合、自己破産によって迷惑をかけてしまうので以降の取引を拒否される可能性もあります。

また直接迷惑をかけなくても、「自己破産した」というだけで取引を敬遠されるケースがあるでしょう。このように、個人事業主やフリーランスが自己破産すると取引先の信用を失うので事業を継続しにくくなる傾向があります。

6-5.破産しても事業を継続しやすいケースとは

以下のような場合であれば、破産しても事業を継続しやすいといえます

  • パソコン1台など、最低限の道具で事業を行っている
  • 従業員を雇用していない
  • 店舗や事業所を借りていない
  • 事業のためにローンやリースを利用していない(ローンやリースを利用しなくても事業を継続できる)
  • 今後も継続した収入が見込まれる

自分の体一つで仕事をしている一人親方などの場合、破産しても事業を継続しやすいといえるでしょう。その意味で個人事業主よりも身軽なフリーランスの方が、事業継続できるケースが多いとも考えられます。

7.個人事業主、フリーランスの自己破産は弁護士へご相談ください

個人事業主やフリーランスが自己破産する場合、会社員のケースよりも権利関係が複雑になるのが一般的です。管財事件になる可能性も高いので、少しでも費用などを抑えてデメリットを小さくする方法を考えるべきといえるでしょう。事業継続したい方の場合にも慎重な対応が必要となります。

DUONは個人の破産や債務整理案件に力を入れて取り組んでいます。自己破産を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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